フランネルソファの作るソファは、すっきりとしたシルエットが印象的です。形を考えるとき、どんなことを大切にしているのでしょうか?
デザイナー Tさん:
直線と曲線が互いに引き立てるバランスを大切にしています。そのうえで「機能」と「デザイン」を軸に、新しい挑戦の中から特徴的なフォルムが生まれていきます。
たとえばソファLENIS(レニス)では、建築の直線と曲線から着想を得たデザインを採用しました。背クッションやスチール脚に建築的な「ツノ感」を取り入れ、スタンダードな中に遊び心を添えています。
背クッションの角がシャープで、すっきりした印象ですね。この形を出すために、どんな工夫をされているのですか?
縫製職人 Sさん:
ソファを使ううちに背クッションが型くずれする懸念があったため、背クッション中材に細かい粒状のポリエステル綿を採用しました。粒状の綿のため、クッション全体に隅々まで行き渡るのでピンと生地が張り、美しいシルエットが立ち上がります。また、ポリエステル綿の粒の間に適度な空気を含むため、フェザーに近い柔らかな感触も得られます。
縫製職人 Sさん:
もたれたときの安心感と枕のような寝心地を両立するため、座って寝てを繰り返しながらデザイナーと何度も試作し、「ちょうどいい曲線」を探りました。
デザイナー Tさん:
LENISに限らずどのソファでも、職人とデザイナーがともに試作を重ね、使う人を思い浮かべながら形を探しています。そのプロセスからこそ、機能を満たした先にある美しさが生まれると感じています。
確かな技術
端正なシルエットを生み出すために、縫製の製造工程でこだわっている点や意識していることを教えてください。
縫製職人 Sさん:
生地の伸びや質感はシリーズごとに異なりますが、同じシルエットになるよう、生地ごとの縫製や型データにこだわっています。ツルツルと滑るものもあれば、硬く扱いづらいものもあり、どんな生地でも同じ仕上がりに見せるには、動きを感じ取りながら針を進める技術が必要です。基本の型データを基準にして、生地ごとに数mm単位で寸法を微調整した上で生地を裁断し、直線も曲線も正確に縫い上げていきます。
縫製から検品、修正までの流れの中でも、検品はとくに重要です。図面どおりに縫えていなければ、カバーリングや張りの工程で角がずれたり、生地がきつくなったりする。フランネルソファが求める端正なラインを守るために、一つひとつを丁寧に見極めています。
どの工程を見ても仕上がりにムラがなく、全体がとても均一に見えます。その「一体感」は、どのようにして生まれているのでしょうか?
縫製職人 Sさん:
製造の体制が影響していると思います。縫製・カバーリング・張り工程それぞれ、1件のお客様につき1人の職人が担当しています。ライン作業に比べれば効率は落ちますが、すべてを1人が仕上げることで、ソファの形に一体感が生まれ、品質も安定します。お客様のことを思い浮かべながら責任を持って制作することで、完璧を目指して丁寧に仕上げられます。
新作に挑戦してもフランネルソファらしさが失われないのはなぜでしょう?
デザイナー Tさん:
毎回「今のフランネルソファにないソファをつくりたい」と挑戦していますが、ものづくりの考え方は一貫しています。デザイナーが描いた初期デザインをたたき台に、職人といっしょに使いやすさ・心地よさ・美しさを徹底的に追求する。その姿勢がソファの形に自然と現れ、お客様にフランネルソファらしい形と感じていただけているのかもしれません。
縫製職人 Sさん:
私たちも「もっと良いラインをつくるには?」と常に問い続けています。改善や工夫に終わりはなく、小さな発見の積み重ねがソファの形に息づいているのかもしれません。
直線と曲線を見つめるまなざし、デザイナーと職人が響き合う手仕事、使い手に寄り添う心、
そして工程を支える精緻な職人技。これらが重なりあうからこそ、フランネルソファの端正で機能美を宿したシルエットは、日々の暮らしの中で静かに息づき続けます。
小さな発見を積み重ね、新しい形や改善を受け入れていく。その果てしない探求こそが、フランネルソファが目指す「美しいシルエット」を育てていきます。
